思い出は返らない
自分の心はまだ、校舎から見た夕暮れの景色を追っていて、大人になったなんて自覚もないまま、時間の残酷さを感じながら涙を流している。
大人になったという感慨があるのではなく
大人になってしまったという諦観がそこにはあって
いつか来ると覚悟していたその断頭台が遂に迫ってきて
どうすればいいのかもわからずただ泣くしかない
ここにはない何処かに
きっと自分が追い求めていた未来があると信じて
いつからか痛み、軋んだ脚を動かし続けて
いったいどれほどの時が経ったのだろう
薄く、長く、ただ惰性的にも見える人生をたった数十年過ごした程度で、世の中の全てを知ったふうになっているのは、この世界が思った以上に窮屈であることの裏返しなんじゃないだろうか
こんなことなら始めからなにも知らないまま
最後まで理解しないまま、ただ愚かに過ごしてきたほうがよっぽど楽なのではないか
どうして、こんなに辛いものを知ってしまったのだろう
ただ、それを知りたかっただけなのに