秋の夜長に、酸素で充ちた肺を潰す
冷たく心地良い風というものは自ずから得に行くものではなく、心が満たされる瞬間に迎え入れてくれる世界の有り様だ。
秋の夜長は、誰をも等しくその心地良さを齎す。
明日晴れるとふと憂いた少年の背中に、秋は本当に欲しいものを与え続ける。
フローリングの床に寝そべってはいけないなんて誰も言わなかった。
肌で感じるその冷たさと、体温が静かに伝わっていく木目の床に、僕は優しさを噛み殺すようなため息を吐いた。
あと少しで大人になってしまうという焦燥が仄かに僕の胸を掻き立てた。
わかってる。わかってるんだ。
その時はどんなに強い覚悟で臨んだって敵わない。
郷愁は遥か彼方に追いやられ、残ったのは強襲された現実だけだ。
このまま大人になるなんて嫌だ、と必死になって武器を磨く。
その浅ましさは青春なんかじゃない。
理性はいつでもいつまでも僕らの青春を叩き潰しにやってくる。
現実という無情で非情な無常がやってくるんだ。
気づけば心はドブの中だ。
汚泥と汚物に塗れた世の中は、平凡と凡庸と退屈を押し付けて、押し売りをするんだ。
……こんなに追い詰めてるのに覚悟はいつまでも定まらない。
時は金なんかじゃない。水だ。
金なんて言うのは、人間が勝手に生み出した社会の潤滑油だ。高尚で超自然的な時間なんかと一緒にするな。
人間はどこまでも僕を殺しにくる。
大人がいる限り、僕は子供で在り続けることを頑なに誓おう。
世界は僕のものだ