塵書き

日記とか詩とか、言葉の落書きとか。思うままに。

2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

夢、ひとつめ

「マウスはいりませんか」 すこし嗄れた男のものの声が、路上に響く。 その男は赤い頭巾を被っており、目元は見えないが、その立ち居振る舞いが美麗な青年であることを示している。 しかし、そんな男の声に耳を傾ける者も、男の姿に目を奪われる者もいない。…

忘れものは拾えない

晩夏の夕焼けに目を眩ませた。 遠い、遠い数日間の記憶はきっと夢になる。 笑えない思い出のひとつがまた増えてしまった。 もうすぐ秋になる。 段々と冬の呼吸が、冷たさを孕んだ真白な着物たちが私を包み込んでいくのは、寂しさも優しさも同居させたような…

夕暮れ、車窓の向こうを見る

嵐の前触れのような黒々とした空を見ていた。 この空模様は一過性のもので、明日の朝にはまた綺麗で澄んだ青空が広がっているのだと、天気予報は告げた。 空にすら劣る私の心象は、曇り淀み続けてどれくらい経ったのだろうか。 明日に希望を持つことに嬉々と…