忘れものは拾えない
晩夏の夕焼けに目を眩ませた。
遠い、遠い数日間の記憶はきっと夢になる。
笑えない思い出のひとつがまた増えてしまった。
もうすぐ秋になる。
段々と冬の呼吸が、冷たさを孕んだ真白な着物たちが私を包み込んでいくのは、寂しさも優しさも同居させたような、違和感そのものの空気に安心と温もりを感じてしまう性質がそうさせるのかもしれない。
冬が来る。
まただ。また私は見えないモノに囚われている。
掴めない居心地をさんざ抱きかかえようと必死になる。
それは夏の記憶だ。
ついぞ置き去りにできないままもう大人になってしまう。
否、むしろ大人になれない自分がそこにいる。
夢や目標は、自分が自分たらしめるための確たる証拠で、同時にそれは大人になるためのパスポートだ。
大人のフリをする子供をたくさん見てきた。うんざりするくらいだ。
軽蔑した、嘲笑った、ああはなるまいと誓った
それがどうだ。
もう冬になる。
夏に留まっている私は未だに大きな積乱雲を追っている。
置き去りにされていたのは、私だった。