暮れ枯れ
救いとは何か
という題目があったとして、そこに夢を描く人はどれくらいいるのだろう
世の中はマルかバツ、零か百しかなくて
世界のルールはそうやって決まっていると信じていた
水滴が落ちて墨が薄まるように消えていった思想の切掛を覚えているか
「変わりたい」という人間の心理に否応なく変転する自分を見つめて、果たしてそれは「変われた」と思えるのだろうか
現を踏んだ君に解答欄を埋めることはできるか
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「日の暮れを見ると心がざわつかないかい?」
「わからない。どうしてそう思うんだ?」
「うまく言葉にすることができないんだけど」
飲料の残っているペットボトルを蹴り捨てる
「こんな感じ」
「怒っているのかい?」
「違う。怒っているわけじゃないの。でもね」
食べ残しがある弁当箱を投げ捨てる
「なんだか落ち着かないんだ」
「…そうか。君が言うならそうなんだろう」
「ねぇ」
首に手がかかる
「想像してみて。もし君が救いを考えるなら、それはどんな景色になってる?」
「……とても、残酷なんだけれど…それが一番の近道で、そしてきっと、美しいと思う」
「驚いた。君ってロマンチストなんだ」
首にかかった手が離れる
「そっか。悲しいな、君とはもう一緒にいれないや」
「僕は悲しくないな。なんだか晴れやかなんだ。君の残した熱が消えたら、僕は帰るよ」
「ふふ、きっとまた会えるよ。さようなら」
微笑んだその瞳には、昨日流した涙が今日も流れている