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夏が過ぎ、秋の涼しさが顔を出し始めたこの日々に感じるものはなにもない。
否、ないわけではないが、それは私の触れていいものでは無いのだ。
孤独は埋められない
少し居眠りをして、雨音に目を開けた。
雨音が織り成す変奏曲は、僕を人間の喧騒から遠ざけるように響いていて、とても嬉しかった。
聞き慣れた声に聞こえないフリをするのを、雨は手助けしてくれているようだった。
「それを見る必要はない」
「感傷に浸ることなんてない」
「思い出にはなにもない」
何度も言い聞かせたことだ。
また同じ気持ちになって、同じ過ちを繰り返そうとする自分に、呆れたようなため息をつく。
雨音は僕の何もかもを誤魔化して隠してくれる。
世界は僕のものだ。