塵書き

日記とか詩とか、言葉の落書きとか。思うままに。

充足という名の毒

生きるとは毒を飲み続けるということと同義に思う

 

意識を持ち、理性を持ち、感情を持つ私は、生とか苦とかいう概念に日々翻弄され続けている

 

苦を得ることで生を意識し、

生を実感するために苦を得、

それらをどうしようも無いと諦観しているのだが、

誰しもがマゾヒスティックかつサディスティックな内部を備えている証左足り得るのではと常々思う

 

若さゆえの経験の浅さは苦だし、

老いゆえの体力の無さは苦だし、

人間性という多種多様千差万別の概念は苦としか言いようがなく、人間は多くても少なくても苦になる

 

生苦とはよく言ったもので、仏教は中々に真理を突いていると実感する

 

どうしようもなく今を生きてるんだ。

 

あぁ、本当にどうしようもない

生きることに意味なんてないのに

その死は数十億のうちの一でしかないのに

そこに拘ってしまうことが罪ではないかと

無知は時に雄弁に語ってくれよう

まぁそれこそ「愚の骨頂」というやつだろうが

若きへの遺文

大人になりたくない

最後まで希い、遂に叶うことの無い望みだった

 

否、「なりたくない」のではなく「同じに見られたくない」が正しいだろう

 

私が今まで見てきた大人が限定的なものなのかもしれないが、私の中にある大人のイメージはごく簡潔に言うならば「愚者」のそれである

それ以上言葉を連ねるなら、その罵詈雑言はゆうに万を超えるのでここで止めておく

 

少なくとも彼らの賢いさまを見たことは無い

……「狡賢い」ならあるだろうが

 

さて、私はもう間に合わない

同一視されないようにするのに時間をかけ過ぎたし、省みれば怠慢に溺れた後悔塗れの青春だった

 

なので後進に継ぎたい、老婆心であるが伝えたい

心の隅にでも記憶してくれれば重畳である

 

「大人よりも大人であれ」

心を育てることは、勉学よりも優先されるべきことであり、人が人として生きていく上での至上命題であるとここに断言しよう

自身の中に根付く理性と感情を研磨せよ

この世界は君たちのものだ

世界を見、聞き、触り、握り掴め

苦言を呈す愚か者共には唾を吐く価値もない

嘲笑ってその先へ進め

君が望む死に様を描け

 

祝え

世界は君たちのものだ

 

言葉は薄情だ

愛を歌うことなんていつだってできる。

でもその愛を誰か、自分の本当に愛する人に向けることはそうそうできることではないのだろう。

 

虚しさは自分が満ち足りていない証拠だ。

自分が浅ましい欲の塊でしかない証左だ。

 

身近な誰かに押し付けて満足するなんて、そんな哀しいことはもうやめよう。

考える度に醜くなっていく自分に、嫌気が差してくる。

 

理想をどれだけ語り合っても満たされる世界なんてもうないんだ。

子供だった僕達は、たった数千日で大人になることを義務付けられてしまった、こんな世の中間違ってると嘆こうか。

 

なにもかもやり直したい

全て総て、こんな世界のせいだ。

酩酊した意識の中で

陶酔には2種類がある。

 

自己に酔うことと自己が酔っている自覚を持つことである。

 

前者は文字通りの酩酊

良く飲み、良く酔い、良く眠る。

或る人は自己の弱さに酔いを敵にしてしまうが

これはこれで、泥酔の一種であり、

酩酊してることに変わりはない

悪く言うなら「何も考えていない」と

完結させるだろう

 

では後者はどうか

自己が酔っている自覚があるのは

酔うことができていないことの証左になりえないだろうか

自分が酒に(或いはその場に)酔うことというのは

自己を客観視する真逆になると思う

その頭の中では自分が酔っている状況の証拠をつらつらと並び立てる。

ウォッカを飲んだ。ジンを飲んだ。ウィスキーを飲んだ。カクテルを飲んだ……

頭が痛い

フラフラとした足取りだ

耳鳴りがする

嘔吐感がある……

 

分析をしているのは正しく自分であり、肉体を弱らせているのも自分だ。

 

本当にそれは「酔って」いるか?

その場凌ぎで自己のキャラクターを演じてるだけなんて、そんな浅ましいものは捨ておいてしまえ

 

あなたは一生酒に酔うことができないんだから

 

短編「囁き」

「命を可視化するなら人生は一冊の本に収まるか?」

僕の隣に佇む幽霊が、いつもそう問いかける。

こいつは見えない。

周りはこいつの存在に気づいていないようだし、俺には見えるそいつは、地面から明らかに浮いている。俺も見えないフリをしていれば、そのうちこいつは諦めていなくなるだろうと、知らないフリをしていた。

でも、ある日を境にそいつは俺の隣に現れた。

あれはそう、雨の音が耳朶に響くような、陰鬱な日だった。

 

「将来の夢はなんですか?」

何かのバイトの面接でそんなことを聞かれた。

「夢は、まだ明確には決まってはいませんが…」

……よく覚えていない。

なにか、当たり障りのないことを宣ったと思う。

ただ、よく覚えているのは、面倒臭そうな表情を隠せていない面接官の薄っぺらい笑顔だけだ。

やはりと言うべきか、そのバイトには落ちていた。

…あの日の面接官の薄っぺらい笑顔と、あの言葉だけが未だに雨の音とともに耳に残っている。

 

『将来の夢はなんですか?』

 

ずっと考えていたことなのに、未だに決着のつかないそれは、僕のアイデンティティを崩しにかかるには充分事足りた。

どうして。

今になって僕は考えたんだろう。

今まで碌に聴いていなかった音楽の歌詞が、唐突に頭に浮かぶ。

頭ではわかっていたんだ。

わかっていたはずだったんだ。

だのに、今になって突きつけられたこの感情と、この衝動を、一体どこにぶつければいいのだろうか。

 

「……人生を可視化するなら…命は、一冊の本に収まるか…?」

 

切々と、切々と、また隣でこの幽霊が囁く。

僕は今までの人生でなにをやっていた?

この人生は、いったいどこに向かっている?

振り返る。

20年にも満たない僕の人生は、気づけばそのピークを過ぎていた。

待っているのは期待もない、歯車の時間と、たった少しの余生。

青春を綴っていたはずのその手は、いつの間にか絶望を綴るようになっていた。

きっとその本は、小冊子と呼ぶのも烏滸がましい、薄っぺらいものが完成しているのだろう。

 

息を吸う。

それは今まで足りていなかったものを補っていくかのように、貪欲さを垣間見せるような深呼吸だった。

幽霊はいつしかいなくなっていた。

僕はまた人間を嫌いになる。

僕はほくそ笑んだ。

 

秋の夜長に、酸素で充ちた肺を潰す

冷たく心地良い風というものは自ずから得に行くものではなく、心が満たされる瞬間に迎え入れてくれる世界の有り様だ。

秋の夜長は、誰をも等しくその心地良さを齎す。

明日晴れるとふと憂いた少年の背中に、秋は本当に欲しいものを与え続ける。

 

フローリングの床に寝そべってはいけないなんて誰も言わなかった。

肌で感じるその冷たさと、体温が静かに伝わっていく木目の床に、僕は優しさを噛み殺すようなため息を吐いた。

 

あと少しで大人になってしまうという焦燥が仄かに僕の胸を掻き立てた。

わかってる。わかってるんだ。

その時はどんなに強い覚悟で臨んだって敵わない。

郷愁は遥か彼方に追いやられ、残ったのは強襲された現実だけだ。

 

このまま大人になるなんて嫌だ、と必死になって武器を磨く。

その浅ましさは青春なんかじゃない。

理性はいつでもいつまでも僕らの青春を叩き潰しにやってくる。

現実という無情で非情な無常がやってくるんだ。

 

気づけば心はドブの中だ。

汚泥と汚物に塗れた世の中は、平凡と凡庸と退屈を押し付けて、押し売りをするんだ。

……こんなに追い詰めてるのに覚悟はいつまでも定まらない。

時は金なんかじゃない。水だ。

金なんて言うのは、人間が勝手に生み出した社会の潤滑油だ。高尚で超自然的な時間なんかと一緒にするな。

人間はどこまでも僕を殺しにくる。

大人がいる限り、僕は子供で在り続けることを頑なに誓おう。

 

世界は僕のものだ

葦を噛み潰せ

演者はあなたと僕と私と俺

 

夢を買った灰色の亡者に敬礼を捧げよ

 

金を捨て海に飛びこんだ小太りの中年男どもには罵声を浴びせ、海から出してはならない

 

私は風化した都市の草原を踏もう

僕は全てを奪われたシャッターだらけの商店街を歩こう

俺は風俗街の底辺をカーペットにして家々を燃やそう

 

道化が嗤うよ 議会の壇上で

道化が踊るよ 皇居の屋根の上

道化が落ちるよ ビルの上

 

悦びと憎しみと哀しみを僕らに

水と油と塩と胡椒と酒を私たちに

血肉と汗と涙と涎と糞尿と骨と脳髄を俺たちに

 

カーニバルは国を呑み星を喰む

 

葦に支配された人間たちの末路